事務所でのデータ共有において、NAS型のサーバーを使って社内ネットワークを構築しているケースは多いと思います。しかし一方で、外出時にそのデータにアクセスしようとすると、VPNやリモートデスクトップを使わなければならず、不便を感じていませんか?
その「最適解」となるのがGoogleドライブです。今回は、なぜGoogleドライブが事務所サーバーの代わりとして優秀なのか、その理由と運用上の注意点を解説します。

クラウド化にこだわる理由
テレワーク廃止の悔しい原体験
私が以前勤務していた税理士法人では、データのクラウド化が進んでおらず、コロナ禍でのテレワーク導入に大きな壁が立ちはだかりました。「テレワークをするために、まず出社時に書類をスキャンする」――そんな作業に対し、当時の経営層から理解が得られず、結局テレワーク制度そのものが廃止されてしまったのです。
「働き方のミライをクラフトする」ために
「優秀な人が、場所や時間の制約だけで働けなくなるのはおかしい」
その悔しい原体験が、ミライクラフト税理士事務所の原点です。当事務所では、創業当初から「フルリモート体制」を前提にシステムを構築しています。
子育て中で出社は難しくても、1日2〜3時間のフルリモートならプロフェッショナルとして輝ける。そんな方々に「働ける場所」を提供することこそが、私たちが掲げる「働き方のミライをクラフトする」というMissionの証明だと考えています。
マイドライブの危険性と「共有ドライブ」のメリット
ドメイン外への誤送信を防ぐ
Googleドライブ自体は、個人的に使ったことがある方も多いと思います。
通常のマイドライブに色々とデータを保管して、必要に応じて共有することもできますが、「ドメイン外のユーザーに間違えて共有してしまいそう」だと感じたことはないでしょうか?
業務で使うなら、Google Workspaceのビジネススタンダード以上のプランで使える「共有ドライブ」がおすすめです。
組織として管理する安心感
共有ドライブであれば、個人所有ではなく組織の所有となります。フォルダごとに共有権限を設定しておけば、全社用や管理者用にと、適切にアクセス権限を付与することができます。
誤操作による情報漏洩のリスクを減らし、組織として安全にデータを管理できるのが大きな特徴です。
まさに中核!URL共有と強力な検索機能

URLですべて完結するシームレスな連携
Googleドライブに入っているデータは、すべてに固有のURLが付きます。そのため、重たいファイルを添付しなくてもURL共有が可能です。
また、GmailやGoogleチャット、GoogleカレンダーやGoogleドキュメントなど、他のGoogle Workspaceアプリに添付するのも非常にスムーズ。まさにシームレスなGoogle Workspaceの中核というべき機能です。
ファイルの中身まで検索対象
さらに便利なのが、Googleの技術が詰まった強力な検索機能です。
Googleドライブの検索窓にキーワードを入れると、ファイルタイトルだけでなく、ファイルの中身(テキスト)まで検索の対象になります。
例えば、スキャンしてPDF化した紙の資料や画像であっても、GoogleのAIが文字を認識(OCR)してくれるため、「請求書の中にある取引先名」や「契約書の条文」で検索してもヒットするのです。
「あのファイル、なんて名前で保存したっけ…」とファイル名を忘れてしまっても、中身のキーワードさえ覚えていれば大丈夫。
膨大なデータの中から必要な情報を一瞬で引っ張り出せるので、「探す時間」が大幅に短縮され、業務効率が格段に上がります。
パスワード流出は「ある」前提で!2段階認証の必須性
2段階認証で99.9%防げる
Googleドライブに全データを預けるにあたって重要な点は、「パスワードの流出があると全データにアクセスされる恐れがある」ということです。
そのため、パスワードの流出は「あるもの」として運営すべきです。
最低限のセキュリティとして、2段階認証は必ず入れましょう。
これを設定しておけば、万が一パスワードが流出しても、本人のスマートフォンが無ければ第三者のログインはほぼ不可能です。大手テック企業によると、これで不正アクセスの99.9%を防ぐことができるとのことです。
さらに強固な設定も可能
なお、最近ではアサヒグループがランサムウェア被害を受け、VPNから『ゼロトラスト』への移行を進めている(攻撃はその移行最中だったそうですが)といったニュースも耳にします。
実は当事務所も、Googleドライブを基盤としたこの『ゼロトラストセキュリティ対策』を全面的に取り入れています。
管理コンソールでの詳細な設定など、話し出すとかなりマニアックになるので本日は割愛しますが、VPNに頼らないこの仕組みこそがこれからの主流です。
みなさんが運用される場合は、まずはその第一歩として、最低限、2段階認証は入れましょうね。
容量不足の心配無用?ランサムウェア対策も進化

3人で6TB!容量は十分
Google Workspaceのビジネススタンダードであれば、1人あたり2TBの容量が与えられます。
例えば3人の組織でも、共有ドライブの容量はなんと合計6TB。動画コンテンツなどが多くない限り、容量が足らなくなるということはまずないでしょう。
AIによるランサムウェア対策
また、セキュリティ面でも進化しています。2025年10月より、Googleドライブのミラーリング対象ファイルにランサムウェアが入り込んで暗号化しようとした際、GoogleドライブがAIでその「異常な挙動」を検知して、自動的に同期をロックする機能が追加されました。
具体的には、短時間に大量のファイルが書き換えられるような動きをAIが「攻撃」と判断し、被害の拡大を食い止めてくれるのです。従来のNASではネットワーク経由で一気に被害が広がるリスクがありましたが、この機能は今世間を賑わしているランサムウェアへの強力な対策になります(もちろん絶対ではないとは思いますが、大きな安心材料です)。
【注意】会計・税務ソフトデータには「落とし穴」あり
こんなに便利なGoogleドライブ、特にGoogle Workspaceのビジネススタンダード以上のプランを使っているなら、使わない手はないですよね。
しかし、会計ソフトや税務ソフトデータの置き場としては、実は大きな落とし穴があります。
これについては前々回の記事で詳しく書いていますので、該当する方は是非チェックしてみてください。
【失敗事例】Googleドライブの落とし穴?弥生PAP会員が解説する弥生会計データ×弥生ドライブのススメ!!
まとめ

本日は、NASに代わるGoogleドライブ運用のメリットとセキュリティについてお話ししました。
- 共有ドライブなら権限管理もしっかりできて安心
- 検索機能とURL共有で業務効率アップ
- 2段階認証は必須(これでほぼ防げます)
- 容量も十分で、ランサムウェア対策機能も進化中
便利なツールだからこそ、正しい知識と設定で安全に使いこなしたいですね。
次のステップ
まずはご自身のGoogleアカウントのセキュリティ設定を確認し、「2段階認証」がオンになっているか今すぐチェックしてみましょう。
代表税理士 今北 有俊
